民法改正前に公正証書遺言で指定を受けた遺言執行人
こんにちは!王寺町の行政書士の菊川です。
今回は同業者の皆様に向けて、という内容になります。
テーマは「民法改正前に公正証書遺言で指定を受けた遺言執行者は、改正前と後、どちらの民法に従うべきか?」という問題についてご報告したいと思います。
※筆者注(R6年4月23日): 訂正させてください!私は最初「改正前の民法に従うべき」と書いていたのですが、これは私の誤解でした。以下の解説も、適宜修正をしております。申し訳ありません。
結論はズバリ、「改正前の民法に従うべき部分と、改正後の民法に従うべき部分がある」です!
順を追ってご説明します。まず、遺言執行者についての規定は、民法1004条から1021条までで規定されています。
平生30年改正の前後で変更のあった点は、1007条2項(新設)、1012条、1014条2~4項(新設)、1016条です。
これらの新条文については、民法巻末の附則(平成30年7月13日法72)の第8条(遺言執行者の権利義務等に関する経過措置)1~3項に「こういう場合には新法を適用する、こういう場合には適用しない」という定めがあります。
附則(平成三〇.七.一三法七二) (遺言執行者の権利義務等に関する経過措置)
第八条 新民法第千七条第二項及び第千十二条の規定は、施行日前に開始した相続に関し、施行日以後に遺言執行者となる者にも、適用する。
2 新民法第千十四条第二項から第四項までの規定は、施行日前にされた特定の財産に関する遺言に係る遺言執行者によるその執行については、適用しない。
3 施行日前にされた遺言に係る遺言執行者の復任権については、新民法第千十六条の規定にかかわらず、なお従前の例による。
※それぞれの条文については、このポスト末に挙げておきます。
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附則第八条第1項、この「遺言執行者となる者」という部分の「なる」は「(執行者として)就任する」を意味していると考えられます。遺言執行者は、遺言の中で指定を受けていても就任を辞退することができます(民法1006条3項)。ですから、この「なる」は「指定を受ける」ではなく「就任する」を意味していると読めます。
そして、「施行日以後に遺言執行者となる者にも適用する」の部分、これはつまり、施行日以後に就任した執行者は改正後の1007条2項と1012条に従ってください、と言っていると解釈できます。「施行日前に開始した相続」の場合でも、施行日以後に執行者が就任したのであれば、1007条2項と1012条は新法に従う、だから施行日後に開始した相続に関しても同様に新法に従う、と解釈できます。
附則第八条第2項と3項は、施行日前に作成された遺言であれば改正前のものに従う旨が定められています。1014条2~4項は新設なので適用なし、1016条は改正前の規定が適用される、とのことです。
ということで、「改正前の民法に従うべき部分と、改正後の民法に従うべき部分がある」というのが結論となります。
恥ずかしながら、私は今日まで附則の見方がよく分からずに、この問題を法務局に電話して尋ねてしまいました。ご担当の方は、大変親切に分かりやすく説明してくださいましたが、素人のような質問でお邪魔をしてしまったこと、大変申し訳なく思っています!
これからは、附則までしっかり掲載してある六法を使って、「法律家らしく!」仕事をしていきたいと思います。
反省も含めたご報告でした!
(遺言執行者の任務の開始)
第千七条 略
2 遺言執行者は、その任務を開始したときは、遅滞なく、遺言の内容を相続人に通知しなければならない。
(遺言執行者の権利義務)
第千十二条 遺言執行者は、遺言の内容を実現するため、相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を有する。 2 遺言執行者がある場合には、遺贈の履行は、遺言執行者のみが行うことができる。
3 第六百四十四条、第六百四十五条から第六百四十七条まで及び第六百五十条の規定は、遺言執行者について準用する。
(特定財産に関する遺言の執行)
第千十四条 略
2 遺産の分割の方法の指定として遺産に属する特定の財産を共同相続人の一人又は数人に承継させる旨の遺言(以下「特定財産承継遺言」という。)があったときは、遺言執行者は、当該共同相続人が第八百九十九条の二第一項に規定する対抗要件を備えるために必要な行為をすることができる。
3 前項の財産が預貯金債権である場合には、遺言執行者は、同項に規定する行為のほか、その預金又は貯金の払戻しの請求及びその預金又は貯金に係る契約の解約の申入れをすることができる。ただし、解約の申入れについては、その預貯金債権の全部が特定財産承継遺言の目的である場合に限る。
4 前二項の規定にかかわらず、被相続人が遺言で別段の意思を表示したときは、その意思に従う。
(遺言執行者の復任権)
第千十六条 遺言執行者は、自己の責任で第三者にその任務を行わせることができる。ただし、遺言者がその遺言に別段の意思を表示したときは、その意思に従う。
2 前項本文の場合において、第三者に任務を行わせることについてやむを得ない事由があるときは、遺言執行者は、相続人に対してその選任及び監督についての責任のみを負う。
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